脳梗塞の後遺症について
脳梗塞の後遺症には、運動や感覚に障害をきたす麻痺や言語障害などさまざまな症状があります。
- 自分の症状は後遺症によるものなのか?
- 脳梗塞の後遺症は治るのか?
- リハビリの方法は?
ここでは、脳梗塞の後遺症の症状や原因、リハビリ等の改善方法についてをご説明します。
脳梗塞は大きく3つに分類される

脳脳梗塞は、脳卒中とよばれる病気の中のひとつの種類です。脳卒中は大きく分けて以下の3種類に分類されます。
- 脳梗塞:脳の血管が狭まったり、塞がれたりすることで詰まる
- 脳出血:脳の細い血管が裂けて脳の組織の中に血腫(出血の固まり)をつくる
- くも膜下出血:脳の太い血管にできた脳動脈瘤が裂けて脳の表面に出血する
また、脳梗塞の中でもさらに3つのタイプに分類されます。どのタイプかによって、症状の重さも変わります。
ラクナ梗塞
脳の太い血管から分岐している細い血管がつまることで発生します。脱力やしびれ、話しづらさといった身体現象が起こりますが、意識障害までには至りません。
アテローム血栓性脳梗塞
脳の中でも中大動脈と呼ばれる太い動脈がつまることによって起こります。太い動脈がつまると影響範囲が大きくなることが多く、重症化しやすいのが特徴です。
心原性脳塞栓症
心臓などで作られた血の固まりが流れてきて、詰まることで発生します。アテローム血栓性脳梗塞と同じく、太い動脈がつまることが多いため、重症化しやすいのが特徴です。
脳梗塞の後遺症の原因
脳梗塞を発症すると、脳の血管がつまることで脳に酸素や栄養が行き渡らなくなり、脳の細胞が死んでしまいます。その結果、運動障害や言語障害などの後遺症が残る場合があります。損傷された脳の部位によって、引き起こされる障害は異なります。

前頭葉の損傷
前頭葉は運動機能や思考・判断を司り、動作や感情のコントロールも担っています。話す、考える、集中するといった複雑な知的過程もコントロールします。
前頭葉が損傷を受けると、問題解決能力や行動を起こす能力が失われます。また、前頭葉の損傷を受けた部位によっても障害は異なります。たとえば、前頭葉の前部が損傷を受けると、感情の欠如や注意散漫、反応が遅れるといった症状が現れる可能性があります。
頭頂葉の損傷
頭頂葉は、体の他の部位から送られてくる情報を解釈したり、位置の把握や言語の理解、形や手触りといった知覚の情報をまとめたりします。
頭頂葉は、特定の機能を強く制御している優位側と、別の機能がある非優位側に分かれます。損傷を受けた部位によって、しびれや感覚障害、計算や文字が書くことができなくなる、空間把握ができなくなるといった症状が起こります。
側頭葉の損傷
側頭葉は、記憶と感情を生み出したり、音と映像を理解して、得た情報を音や言葉、物体として認識します。
側頭葉の言語理解を制御している部位に損傷を受けると、言葉の記憶や理解能力に支障をきたすことがあります。また、部位によっては音や音楽の記憶が障害されることがあります。
後頭葉の損傷
後頭葉は、目から得た情報や色、形、明るさなどを処理するなど視覚を司ります。また、動きや奥行きなど空間の情報を処理します。
後頭葉が損傷を受けると、視覚によって物を認識することができなくなります。また、けいれん発作により、色のついた線が見えるなど、視覚的な幻覚を引き起こします。
これらの他にも、共同で機能している複数のネットワークが破壊されることにより、失語や失認、健忘、構音障害などが引き起こされます。
脳梗塞の後遺症の症状
脳梗塞を含め脳卒中は、後遺症が残ることも少なくありません。損傷された脳の部位によって、さまざまな後遺症が起こる可能性があります。脳梗塞になったご本人やご家族は、脳梗塞の症状だけでなく、後遺症まで理解しておくことが大切です。
運動障害(片麻痺)
脳の運動を司る部位が損傷されると、手足を動かすことが困難になる場合があります。運動障害は体の左右片方に起こることが多いため、「片麻痺」とも呼ばれます。
運動障害には、細かい動作ができないといった軽度なものから、手足がまったく動かなくなってしまう重篤なものまで幅広い症状があります。また、小脳がダメージを受けると体のバランス感覚が狂い、めまいが残るなど日常生活に支障をきたすこともあります。
また、麻痺とともに現れることが多いのが「痙縮(けいしゅく)」です。筋肉が緊張しすぎることで、手足が動かしにくかったり勝手に動いてしまう症状がみられます。
感覚障害(しびれ、感覚過敏など)
感覚障害は、知覚に異常をきたしたり、感覚が鈍化するといった症状が起こります。片麻痺と同じく左右どちらかに現れる傾向があります。
たとえば、しびれやじんじんした感覚が続く「異常感覚」や、ニオイや音、味覚や触覚を過剰に感じる「感覚過敏」、末梢神経が刺激されて起こる「神経痛」、五感が鈍感になる「感覚脱失」、敏感になりすぎる「感覚鈍麻」といった症状があります。
構音障害・失語症
構音障害は、脳幹または脳幹につながる神経線維が損傷を受けた結果、唇や舌などに麻痺が出て言葉をうまく発音できなくなる症状です。失語症は、大脳の言語中枢という場所に障害を受けた結果、ことばをうまく扱うことができなくなる症状です。
喋れない、読めない、書けないといった症状が起こり、意思の疎通が難しくなることがあります。
高次機能障害
高次機能障害は、注意が散漫になる「注意障害」や、出来事が覚えられなくなる「記憶障害」、感情をうまくコントロールできなくなる「社会的行動障害」など症状が多岐にわたします。
物を認識できなくなる「失認」や、物の使い方が分からなくなる「失行」も症状の一種です。
視野障害
脳幹の眼球運動を司る部分が障害を受けると視野障害が起こります。たとえば、物が二重に見えり「複視」、視野の左右どちらかが見えなくなる「半盲」、視野が欠ける「視野欠損」などです。
嚥下障害
嚥下障害とは、運動障害や感覚障害により、口や舌などの動きがスムーズにいかず、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる障害です。嚥下障害にともない、食べ物がのどにつまりやすくなったり、むせてしまうといった誤嚥が起こることもあります。
排尿障害
排尿障害は、トイレの間隔が短くなる「頻尿」や、尿意の我慢ができずトイレに間に合わなくなる「失禁」が起こりやすくなる障害です。排尿をコントロールする神経回路に障害を受けることで起こります。
神経症状
脳梗塞の発症後、しばらくしてから起こることが多い後遺症です。ラクナ梗塞と特に関わりが深く、自発性や意欲の低下などが起こります。また、感情のコントロールが難しくなり、気分の落ち込みだけでなく、怒りやすくなる、急に泣き出すといった症状が起こることもあります。
脳梗塞の後遺症は治るのか?【改善事例】
後遺症は、早期のリハビリによって症状を軽くすることができるとされています。リハビリは、「急性期」、「回復期」、「生活期(維持期)」の3つの時期に分けて進めます。
金沢脳梗塞リハビリステーションでも、リハビリによって症状が改善された例があります。
▼N様 女性 70代(脳梗塞、右半身麻痺)
包丁を使うことができませんでしたが、リハビリを受けて野菜を切ることができようになりました。
▼K様 男性 50代(脳出血、右半身麻痺、失語症)
外を歩くことが不安でしたが、今は屋外を装具なしで歩行や階段昇降ができるようになりました。
▼G様 男性 70代(左被殻出血、右半身麻痺)
以前は車椅子への移乗に介助が必要でしたが、今は自分一人でできるようになりました。
脳梗塞の後遺症にまつわるQ&A
脳梗塞の後遺症で性格が変わることはある?
脳梗塞を発症したあとに、ご家族が「性格や人格が変わった」と感じることがあります。以前は穏やかな性格だった方が、イライラしやすくなったり、急に泣き出したりと感情が不安定になるようなケースです。
こうした性格の変化は、脳がダメージを受けたことによる場合と、後遺症に対する心理的負担による場合のどちらかと考えられます。発症後は、気分が沈みがちになり、意欲が低下してうつ状態になることも少なくありません。
しびれや片麻痺の改善にマッサージは必要?
マッサージは、主に疲労回復やリラクゼーションを目的としており、リハビリとは違うものです。
筋肉の凝りがほぐれたり、血流がよくなることで、緊張がとれて楽になるという効果は期待できますが、改善を目指すならリハビリによる訓練を行うことをおすすめします。
脳梗塞の後遺症の改善にはリハビリが重要
脳梗塞の後遺症の症状や原因、改善方法について解説しました。
金沢脳梗塞リハビリステーションでは、脳梗塞後の麻痺などの後遺症にお悩みの方向けに、リハビリの特別プログラム体験をご用意しています。どんなプログラムか体験したい方や、どこまで改善する見込みがあるか知りたい方は特別プログラム体験から始めてみることをおすすめします。
脳梗塞の後遺症でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
※本記事の内容は、医師の診察に代わるものではありません。治療に関しては、必ず主治医の診断を受けてください。
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